“男性職員が当たり前にいる乳児院”を目指して

家庭支援専門相談員
職員インタビュー

家庭支援専門相談員
親と子の“ちょうどいい距離”を探して
「家庭支援専門相談員」という言葉を聞いたことがあるだろうか。保護者との信頼関係を結びながら、養育スキル獲得のサポートを行い、親子が家族として歩んでいくことを支援する仕事だ。
江口相談員は様々な現場を経て、2年前からこの乳児院で家庭支援専門相談員として働いている。現場での日々や、今、子どもたちのために大切にしていることを、江口相談員に語ってもらった。
看護師から虐待対策ワーカーへの道
私はもともと30年近く看護師として働いていたんです。若いころは小児科や小児病棟で働いていて、その時に社会的養護施設で働いてみたいと思っていたんです。そうしたら当時の同僚に、乳児院は看護職で働けるんだよって教えてもらって。それで20代後半から愛知県の乳児院で看護師として働きはじめました。当時は、家庭支援専門相談員という職種もなかったので、養育を担当している私たちが、親御さんとのやりとりも全部やっていました。児童相談所の介入も少なかったんですよね。
その乳児院で7年ほど働いたのち、障がい児の施設に移りました。そこには、虐待によって障がいを負ったお子さんもたくさんいたので、虐待に関する知識や支援方法もすごく勉強しました。そうやって勉強をしていくなかで、虐待防止に関わる仕事ができないかなって思い始めて。
それでその後、東京都内の「子ども家庭支援センター」で虐待対策ワーカーとして働くことになったんです。
虐待と向き合う現場で
― 虐待対策ワーカーというのはどんなお仕事なんですか?
児童相談所と大きく変わるわけではないのですが、児童相談所のような法的権限のある仕事ではないんです。虐待の通報があったら駆けつけて相談にのったり調査したり、虐待まで行かなくても、親御さんが精神的に不安定であったり、育児に不安があったりというケースは結構あって、そういう親御さんからの相談を受けたり、お子さんと面接したりしていました。
― 大変な現場ですね。
そうですね。たくさん担当も持っていたし、厳しい状況のケースも結構多かったですね。
実は、同僚が担当していたケースで不幸な事故があって、それは担当者も本当につらかったし、自分の担当じゃなくても、私もすごくつらかった。どこで何ができたのかって、ずっと考えてしまう。私は本当に子どもたちや親御さんの役に立っているのかって。
それで、もうこの仕事を離れようと思ったとき、あるお母さんに、“今の私があるのは江口さんのおかげです”ってお手紙をもらって。それで、私でも少しは役に立っていたんだって、虐待対策ワーカーを離れる最後に、少し救いになりました。
もう一度、乳児院で
― また乳児院で働こうと思ったのは?
いろいろな職歴があって、今まで一番楽しかった職場はどこだろうって振り返ってみた時、あ、乳児院だって。やっぱり赤ちゃんたちは可愛いし、乳幼児の時って、本当に人生の一番大切な時期だと思うんですよ。今後生きていく上の土台になる。この時期に一人でも多くの大人が、彼ら彼女のことを理解してくれると、多分その先の人生って全然違ってくると思うんです。
乳児院の仕事って、愛着の基礎を築いていく大切で責任がある仕事なんです。相談員は養育に直接関わるわけではないけど、サポートをしていくことで、子どもたちの未来がちょっとでも明るくなればいいなって思っています。
家庭支援専門相談員としての視点
― 相談員として大切にしていることは?
親御さんにもいろいろ事情があり、もちろん子どもにもそれぞれ発達状況や個性があるわけで、「新生児では難しいけど、1歳ころになってできることが増えたら家で過ごせるかもしれない」とか、保護者の状況と子どもの状況、両方を自分なりに見極めながら、児童相談所とコミュニケーションをとって進めています。
「家で過ごすのが一番」という考えもあるけど、せっかく家庭復帰できたのに、何か事故が起こったり、結局育てられない、施設に戻すってなったりしたら、子どもの傷つきになってしまう。家に帰れたのに、また施設に戻ってくる子どもの気持ちってやっぱり想像以上に重いものだと思うんです。そうならないための選択肢を選んであげたいですね。
家に帰るだけがゴールではない
いろいろ事情を考えると、家に帰るのが一番じゃないときもあるんです。残念だけど、保護者の思いに100%応えられるわけではない。親御さんに納得していただけるように話すのは難しいなと思うこともあります。
でも、おうちに帰らなくても、定期的に会いに来てくれたり、週末だけおうちに泊まったり、適正な距離を親御さんと一緒に見つけていくことも大切だと思うんです。子どもが大きくなってからだと難しくなるので、乳幼児のこの時期に適正な距離で親子関係がうまく築けるっていうのが、やっぱり一番いいのかなって。
もちろん最終的にどんなかたちで進めるかを決めるのは児童相談所なんだけど、乳児院としての意見を、私たちは最大限に伝えていきたいと思っています。
この年齢になって理想だけにこだわるのもなんだけど、やっぱり子どもの未来はよくしてあげたいと思うんです。