“男性職員が当たり前にいる乳児院”を目指して

保育士
職員インタビュー

保育士
「あーちゃん」になるということ
日赤医療センター附属乳児院の子どもたちには、すべて「あーちゃん」と呼ばれる担当の保育士・看護師が付く。「先生」でも「ママ・パパ」でもない。子どもたちは自分の担当の「あーちゃん」に甘え、時にはわがままを言い、癇癪を起すこともある。対人関係の基礎を築く大切な存在だ。
今年で入職7年目になる小川保育士は今まで10人の子どもの「あーちゃん」となった。初めて担当児を持ち、「あーちゃん」となったのは、新卒で入職して半年後。まだ23歳の時だ。
23歳で愛着関係の要となる「あーちゃん」になることに、彼女はどんな気持ちで臨んだのか。
子どもが本当の姿を見せる場所で働きたい
― 保育士になって、乳児院に就職しようと思ったのはなぜですか?
私は子どものころ、保育園で、片付けも真面目にやるし、先生の言うことも聞く、おとなしい「いい子」だったんです。でも家では全くそんなことなくて。弟とは喧嘩ばかりするし、お片付けも全然しない。保育園では猫かぶっていたんですよね。 自分のそういう幼少期があったから、保育士になろうと思ったときに、保育園ではなく、子どもが本当の姿を見せる場所で働きたいと思ったんです。乳児院は生活する場所だから、ずっと気を張っているっていうことはできなくて、子どもたちも甘えを強くだしたりする。そういうのも全部ひっくるめて見ていきたいと思ったんです。
― 乳児院の中でも日赤を選んだのは?
大学の実習で重度の知的障がい児の施設に行ったんです。3歳から中学生くらいまでのお子さんがいたんですけど、行動障がいがあるお子さんもいて、私も初めてだったんで、なかなか近づくことが出来なかったんです。でも、ある日、先輩の保育士と一緒に介助する機会があって。そうしたら、こっちがしたことに対して、すごく微量ではあるんですけど、反応が返ってきたんです。キャーって叫ぶのは変わりないのですが、ちょっと興奮が抑えられている声の出し方だった。それまでその子のことを、わからなくて怖い、って感じてしまっていたけど、実は、その子なりのサインがあることに自分が気づけていないだけだったんだって。それからその子と積極的に関わるようにしてみたら、今は嫌な気持ちがするからこういう声を出しているんだとか、今は楽しくてこういう行動をしているんだとかわかるようになってきたんです。それが嬉しかった。こういったお子さんたちに、自分なりに保育の知識を使って、何かアプローチできないかなって。この子たちがより豊かに過ごせる何かができないかなって。それで病児や障がいのあるお子さんがいる施設を探したんです。
自分は子どもの安全基地になれているのか
― 就職してどうでした?
最初は生後1か月くらいから生後半年くらいまでの子がいるお部屋に配属されました。1年目の10月に初めて生後1か月の外国籍の男の子を担当してみないかと言われました。担当をしてみたいってずっと思っていたので、「はい、頑張ります!」って。 もう溺愛に溺愛を重ねました。可愛くてしょうがない(笑) この子の一番でありたいっていう気持ちも沸いたんですけど、でも、一方でこの子にずっとここにいてほしくないっていう気持ちもある。事情があって乳児院に預けていたけど、お母さんが面会もたくさん来てくれていて、おうちに帰るっていう未来があったんです。だから、自分の気持ちを切り替えて、その子が安心して親御さんのもとに帰れるようにしたいと。その子は、お母さんとの面会では少し緊張していたんですけど、例えば自分とお母さんが楽しそうに話していたら、その子もお母さんに安心して甘えられるようになるかな、とか。 結局、その子は1歳1カ月の時に、帰国することになってよかったのですが、帰国が決まってからは、私は悲しすぎてずっとメソメソしていましたね。空港にお見送りにいったあとは、同じ時期に担当児を退所させた同期とお疲れ様会やって、慰めあいました。
― 長く担当されたお子さんもいたんですか?
次に担当した女の子は、生後半年で入所した時から3歳で退所するまで担当していました。イヤイヤ期もすごくて、とにかくなんでも全部イヤで、もうびっくりするくらい。きれいごとじゃ全然できない。育児書通りにこういう声掛けしたらこうなります、とか全然なくて、もう人と人とぶつかり合い。お互いヒートアップしそうになったことも結構ありました。 でも、そうやって気持ちに余裕がなくなっていたときに、何気なくその子が私のところに来て、「あーちゃんのこと、大好き」って抱きしめてくれたんです。 私も涙出そうになって。「やっていてよかったー」と思いました。ずっと、本当に愛情が育まれているんだろうか、自分のことを安全基地としてみてくれているんだろうか、って悩んでいて。毎日、大勢の子どもを見ているから、その子だけに注力できないじゃないですか。その中で担当の子どもに対して、「あなたは特別だよ。あーちゃんの特別な存在なんだよ」って伝え続けるのって意識していても難しくて。そんなときに、そういう言葉を子どもがかけてくれたってことが本当に嬉しかった。

子どもがおうちに帰るのは、120%嬉しいけど、20%は寂しい
― 小川さんは保育中、ずっと「可愛い、可愛い」って言っていますよね。
子どもたち、可愛いですよね。心からぽろぽろって言葉に出ちゃう(笑) 乳児院の仕事は大変なことも多いじゃないですか。業務量も多いし、病気とか知っていかなきゃいけない知識もたくさんあるし、子どもが苦しいっていうサインにもすぐ気づかないといけないから、どうしても学びを高めていかないといけない。でもこの可愛い子たちがいるから頑張れる。こんな可愛い子たちと過ごせるって特権ですよね。 子どもたちのこと、可愛い可愛いって思っていて、彼らがおうちに帰れることになったとき、「ああ、よかった、めっちゃ嬉しい」っていう気持ちは120%あるんだけど、やっぱり20%くらいは寂しい。 乳児院の仕事は、本当に嬉しかったり悲しかったり悩んだり、いろいろですね。すごく心が乱されることがある。でもこんな経験ができるのは幸せなことだなって思います。 10年後、20年後、大きな目標とかはないんですけど、私はずっと子どもと関わっていきたい。それはずっと変わらないだろうなって思います。その子の幸せを願い続けるし、その子にとっての一番をずっと考え続けたいですね。