“男性職員が当たり前にいる乳児院”を目指して
里親支援専門相談員
職員インタビュー
里親支援専門相談員
乳児院から里親へと続くバトン
乳児院で過ごす子どもたちの行先は様々だ。家庭に復帰する子ども、児童養護施設など他の施設に移る子ども、養育里親さんの家庭に行く子ども、そして里親さんと戸籍上も親子となる特別養子縁組をする子どもなどがいる。
子どもたちの里親委託を促したり、里親交流のサポートを行ったりしているのが、里親支援専門相談員の松村さんだ。
もともと、保育士として15年前にこの乳児院に入職した松村さんが、前任者の定年退職によって里親担当を引き継いで8年。「子どもたちが安定した家庭で育ってほしい」という願いを胸に、日々奔走している。
子どもを取り巻く人たちとつながる仕事
― 里親支援の担当になって、どんな変化を感じていますか?
乳児院で仕事をしていると、どうしても子どもたちの生活や成長など施設の内側に意識が向きがちだったのですが、里親支援の担当になって、児童相談所や実親さん、里親さん、いろいろな人たちと繋がるので、子どもたちにまつわる視野を広く持てるようになったなと思います。
里親委託を進めるにあたって、里親さんの思い、実親さんの思い、乳児院の思い、児童相談所の思いなど、みなさんいろいろな思いがあるので、みなさんのそういった意向を調整していくのは大変ですね。でも乳児院にいるお子さんはまだしゃべることができないので、この子にとって一番いい道はなんだろうって本当に一生懸命考えます。
あーちゃんの膝から、里親さんの膝へ
― 里親さんと子どもが初めて出会ってから、実際里親さんの家庭に行くまでにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。
里親さんの支援とか交流の計画ってすごく個別なんです。早く進む場合もありますが、特に医療的ケアが必要な子や障害があるお子さんだと、里親さんの住んでいる地域の医療機関や支援機関とつないだりするので、結構時間がかかることもあります。里親さんと里子さんが安心して生活を迎えられるように、丁寧にステップを踏んで進めています。
― 初めて会う里親さんに、人見知りをすることもありますよね?
あーちゃん(養育担当者)とこの時期に愛着関係が出来ているというのは、とても大事なことなんです。
ちゃんと大人との関係性を育んでいる子なんだっていうことが見えている、ということでもあります。なので「この後は里親さんとも関係性ができていきますよ。不安にならなくて大丈夫ですよ」って、いつも里親さんにお伝えしています。
“赤ちゃん時代”を知るということ
― 里親さんの家庭に行った子どもたちと会うことはありますか?
養育里親さんのもとで生活しているお子さんが、ルーツ探しに乳児院を訪ねてきてくれることもあります。
当時担当していた保育士が、その子が赤ちゃんの時の様子を話したことがあったのですが、そうしたら、最初は暗い表情だったお子さんが、どんどん頬っぺたがぽかぽかした感じになって、気持ちが弾んだ感じで帰っていったんです。
その様子を見て、自分が赤ちゃんの時にどうだったかとか、こんなふうに大事に思われていたよとか語ってくれる人の存在ってこんなに大切なんだって。実のお母さんが自分に似ていたかとか、どんな人だったかとか、そんなことを伝えられるのも乳児院の大きな役割だなと思います。
― 子どもと里親さんが一緒に訪ねてくれることは多いのでしょうか。
そうですね。先日、この乳児院に3歳までいて、その後、養育里親さんの家庭に行ったお子さんが里親さんと一緒に訪ねてきてくれたんです。18歳になって、就職が決まったって。
養育家庭なので、18歳になって措置(養育家庭としての委託)は解除されるんだけど、その後もその家庭から仕事に通うことになったって。
里親さんはこれまでも大変な時期があったりすると、あーちゃんに相談に来たりしながら、ずっと家族ぐるみでそのお子さんを支えて来られたんです。
やっぱりお子さんを受け入れて生活するって本当に大変なことだと思うんですよね。今まで残念ながら里親委託が不調になってしまうケースも見てきているので、こうやってお子さんに合う里親さんに出会えて、子どもが成長した姿を見られたっていうのは仕事の醍醐味を感じますね。本当にこの仕事をしていてよかったと思います。
自分のルーツを誇れる社会に
― これから、里親支援の現場には何が必要だと思いますか?
昔に比べて里親支援に関わる人って、ものすごく多くなっているんです。でもその手が本当に里親さんに届いているのかなって思うこともあって。
私はお子さんの里親委託を推進する立場でもあるので、無事にお子さんたちを委託できるとホッとするけど、里親さんにとってはこれがスタート地点なんです。これからが長くて、本当にたくさんいろんなことが待っているだろうなって思うんです。
送り出す側だと、ついその視点が抜けてしまって「里親さんのところに行けた、よかった」ってなるけど、その後里親さんが子育てでつらい思いを抱えているときにさっと助けてあげられるといいなって。もっと柔軟に支援ができる体制を作りたいなって思います。
それから、里親に関する社会の認識が広がって、周囲に気を使うことなく「私、里親と暮らしているんだよ」って言えるような、自分のルーツを誇れるような社会になってほしいなって思います。





